カニがおいしい季節がやってきた。一口にカニ、といってもその種類は様々である。数多くあるカニの種類の中のその中の一つが越前ガニである。越前ガニとは一体どのような種類のカニなのだろうか。実は越前ガニという名前のカニは存在しないのだ。越前ガニというのは、カニの種類ではなくブランド名である。越前ガニ、というブランド名がついているカニはズワイガニという種類のカニである。越前ガニの他にも、水揚げされる地域によって松葉ガニ、間ガニ、津居山ガニ、加能ガニなどの様々なブランド名があるようだ。所属港ごとに発行されるタグをカニの足に取り付けて他のカニと区別している。
ズワイガニは深海に生息する食用のカニで日本の他にもロシア、アメリカ合衆国のアラスカ州、カナダなどに生息しているようだ。日本においては山口県以北の日本海、茨城県以北の北太平洋、オホーツク海などに生息しているという。おもな生息域は水深200~600mの深海で、0度から3度くらいの水温を好むという。深海域に生息しているために、脱皮、季節移動、寿命などの細かい生態についてはあまり解明されていない。ズワイガニは雑食性だが肉食性が強く、貝類や多毛類を食べるという。また、海底に落ちた魚介類等の死骸や脱皮した自分自身の殻まで食べるらしい。冬の味覚として名高いカニであるというのにそんなものを食べて大きくなっているなんて驚きである。暗赤色の体に10本の足が生えている。足の長さは大きなオスだと広げた状態で70センチほどになるものもいるそうだ。ズワイガニはオスとメスを比較してオスの方が格段に大きく、オスの甲羅の幅は大きいもので14センチほどだが、メスはその半分くらいだという。オスとメスではあまりにも大きさが違うために越前ガニなどのブランド名をつけられるのはオスのズワイガニである。ちなみにズワイガニの「ズワイ」というのは、細い枝を指す古語である「すわえ」がなまったものだという説がある。
普段から、冬の味覚として塩ゆでやカニ鍋としてなんとなく口にしている越前ガニであるが、調べてみるとなかなか興味深い点がたくさんある。カニ、と一口に言ってもなかなか奥が深い。たまには自分の身近な食材などについて調べてみると新たな発見がたくさんあって面白いかもしれない。