冬の味覚の王様であり、福井県の特産品でもある越前ガニ。一体越前ガニは、いつから越前ガニとして人々にここまで愛されるようになったのか。その歴史を探ってみよう。
越前ガニ、という名称は安土桃山時代に三条西実隆によって書かれた日記の中に書かれている記述がその最古であるらしい。永正15(1511)年3月20日の日記には「伯少将送越前蟹一折」翌21日の日記には「越前蟹一折遣竜崎許了」と書かれている。三条西実隆は京都に住んでいたというので、安土桃山時代にはすでに越前で獲られた越前ガニが京都まで運ばれていたということがわかる。また越前ガニというブランド名がつけられているカニは和名をズワイガニというのだが、ズワイガニという名称が出てくる最も古い記録は今をさかのぼること300年前の江戸時代の享保年間に書かれた『越前国福井領産物』である。ズワイガニの語源については諸説あるが、最も信頼できそうなものは漢字の「楚」に由来するというものであるという。この字は古くは若い枝の細くまっすぐなものの事を意味し、これがなまって「ズワイ」となったといわれている。ズワイガニの手足の細長さをよく表した名前であるといえる。「すわえ」とも読まれ1600年代には全国に先駆けて若狭湾の沖合で舟を錨で固定し、網を手で手繰り寄せる「沖手繰り網」が行われるようになり、1700年代には風力を利用して網を引き回す「打瀬網」が行われるようになったためにより深いところでの漁に成功。越前ガニの漁獲量は徐々に増加をしていっていたと考えられる。ちなみに、現在は底引き網漁が行われている。その後越前ガニは明治時代から代々の天皇に三国港で獲れたカニを献上しているために、献上ガニとしても知られている。献上は大正11(1922)年から戦後3年間と昭和天皇崩御の年を除き、毎シーズン行われているという。