社員旅行!

社員旅行で福井を訪ねました。
いま福井に行くなら目的はただひとつ、越前蟹しかありません。
ってそうなのか? 景観は? いえいえ、昼間どんな風光明媚な場所を訪ねて心を洗われようと、やっぱり夜の宴でみんなして蟹にかぶりつくことにこそ、ほんとうに「冬の福井に来た」ことの意義があるのです。
なんて、同僚たちがみなそう思ってたかどうかは知りませんが、少なくともわたしにとっては、そうですね。今年の社員旅行は福井だぞ、と聞いた瞬間から、わたしの脳裏にはぐつぐつと音をたてて茹でられるズワイガニの姿以外、なんにも思い浮かびませんでした。
泊まった宿がまた、徹底した蟹づくしを売りにしているところでした。
まずは、ほろほろと下の中で身が踊るような新鮮な蟹刺し。絶品でしたね。
それから、甘いあまい、そのくせほどよくだしのきいた茹で蟹ね。これがまた、なんだか湯気までおいしい気がしたものです。
そして焼き蟹。これの香ばしさといったらもう。何と云うか、何ともいいようのない、というか、なんか云えよこの野郎、というか。いや、じっさい、蟹をほおばるときはみんな黙るんですよね。言葉を口から出す前に、蟹のうまみが洪水となって押し寄せてくるから。それが越前蟹ならなおさらです。毛ガニやタラバでは、ここまで堪能できないねきっと。いやまあ、彼らだって充分すぎるほどうまいんだけど。なんか、ちがうんだよね。まあそれはいいや。とにかく、そんなこんなで、昼間どういう名所を訪ねたのかを忘れてしまうくらい、夕食の蟹はわたしにとって心底満足のいくものでした。
朝、お皿のふちにちょこんと載ってた蟹クリームコロッケがまた、愛嬌があってよかったなあ。これだから、社員旅行という行事だけは、ふだんどんなにいけすかない上司にこき使われようと我慢して、参加しないわけにはいかないんですよ、ほんと。この会社は毎年こうして、景色の美しさより食べ物のうまさを優先するかのような場所選定をしてくれるんですよね。来年は、どんなうまい食事を出すところに連れてってくれるんだろう。
わたしがこの会社を辞めずにいるのは、殆どそれを確かめるためにだけ一年すごしているからだ、なんて、こりゃさすがに云いすぎかな。
しかしそれにしても、今年の福井の越前蟹は、ここ数年の社員旅行では最高の部類でした
よ。